
秋晴れ。
いつもと同じ時間に目が覚めた。今日は学生時代の恩師に会いに行く。恩師の住まいは佐倉にある。都心から郊外へと映る景色はどこでも同じ様だと高をくくり、がらんとした車内でも視線を落とす。電車を乗り継いで、お宅最寄りの駅に着く頃、顔をあげて車窓から外を見ると、なんと豊かな田園風景が広がっていた。ホームにおりると土の匂い。しかし駅前のロータリーに出ると鼻が慣れてしまった。約束の時間には早く、駅舎に入居するイートインのパン屋に入る。最近は喫煙出来る場所を探すことが難しくなった。店内は客が少なく、気兼ねなくタバコが吸えると安心した。コーヒーとタバコで時間まで待つ。ケータイでメールのやり取りを数本。私はどこへ行ってもやることが同じだと気づいた。
お宅に電話して最寄り駅に着いたことを知らせると迎えにきてくれた。静かな住宅地に恩師のお宅は在った。
以前にも来たことがあるはずだと思って、着くまでの道、お宅の外観、玄関と記憶と照らし合わせたがどうしても一致しなかった。高台にあり、裏庭の桜越しに佐倉の街が俯瞰できる。勝手に入って秋の佐倉を眺めていると
「庭の手入れが出来ていないから」と嫌われた。イタリア語の名前が付けられた猫が気持ち良さそうに横になっていた。邪魔をしないようにそっとその場から離れた。
恩師は今でも教職にあり、学生や卒業生に囲まれている。日曜日にも学生が訪ねてくるという。私も学生時は同じようにお宅にお邪魔した。私はたくさんの時間を貰って、実に多くのことをこの恩師から学んだのだ。
昼食に、武家屋敷らしい蕎麦屋へ行った。恩師が迷わず「大盛り」と注文するのを聞いてつられて同じものを頼んだが、私の胃には多過ぎた。温かいそばはモタモタしていると殖える。底から次々と蕎麦が出てきて困った。恩師のありがたい話はそっちのけ。蕎麦が殖えすぎる前に口に運んだ。恩師は難なく食べ切った。こんな事ですらまだ敵わない。


