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スタッフ(全員)日記タイトル
サッカーとパンクとデザイン 
9月26日土曜日(2009.9.29)

東綾瀬終日秋晴。

いつもの時間に起きる。期待されなければ、遠慮なく眠らせていただく横着者だが、後で味わう自己嫌悪に堪えられない。

午後には野球の試合がある。昼食を待たず出かけなくてはならない。食べてからではキャプテンの“K”に申し訳ない。彼は仕事で多忙なはずだが、野球をしたい欲求は人一倍旺盛だ。試合の案内を、予め念押しメールで送ってきたのも深夜、日を跨いでからだった。

ひと通り家事をこなしたら11時。サイズ59.6cmの野球帽、Lサイズのユニホーム、硬いグローブをバッグに押し込んだ。
グローブは数年前に妻用に買った物を使わせてもらっている。色はペアーグリーン。気取らずに言えば黄緑色だ。私が幾度も借りているうちに不味い黄色に仕上がった。そのうち妻は手にしなくなった。近々妻用のものを新調することになっている。

今回はグラウンドを4時間使える。2時間だとすぐに試合を始めないとならない。私たちは今まで野球の経験がない者が圧倒多数だ。アウトを偶然とるまで時間がかかる。ダブルプレーをとってみたい!盗塁を刺したい!!と失敗を恐れない気持ちが、悪送球の母だ。守備機会毎に、遠くに転がる球を嬉々として追いかける。アウトをタダで貰えるようになるには時間がかかるのだ。

秋の高い空の下、乾いたそよ風が、しっとり汗ばんだおでこを舐める。広い芝のグラウンドの上は心地よい。グラスホッパーがカチカチと言わせて、ボールを目で追う私の気を引く。ストッキングの上から3ケ所、O型の私の血を、断りなく吸った奴がいた。この際細かいことは気にしない。

私は野球をするには若くない。試合開始前の、いつまでも緩いキャッチボールで、早速疲れる。お互いに相手の捕りにくいところに球を投げる。悪意はない。広い芝のグラウンドに転がったボールを拾いに行かねばならない。若かったとしても疲れる筈だ。

年長の私へ気遣い賜り、センターで先発の栄誉に与った。物を遠くに投げるような使い方をしてこなかった中年の肩は、「外野からバックホームしなさい」という、脳が下した決定を、平気で拒否する。助走をつけて腕を挙げたところで、私の右肩は「それはできません」ときっぱり断言する。しかし今日の右肩は違った。「ボールバックーッ!」と言われるまでレフト、ライトと投げ分けたが、「今日はサービスしますよ」とささやくのだった。私は調子にのって、いつまでも腕をふった。

先攻を望んだ私たちは、2回に打線が暴発した。8得点。バットの握りがおかしい“I”までもクリーンヒット。バットの握りがおかしいのに、振るたびにボールは外野の頭を超えた。続く私もつられて2安打。2回で既に「勝っちゃうかも」と顔を赤らめた。慣れない勝者の気分を味わう。

5回で15-12。リードは3点。慣れた状況だ。我々はスコアボードを見る前に薄々気付いていた。このリードは見掛けだけだ。私たちは5回で12点失う防衛力しか持ち合わせていない。

8回、私たちの攻撃。スコアボードの郵便番号のような数字を横に足す。16-17。1点取らなければ試合が終わる。キャプテンの“K”は「ヤバイ!ヤバイ!」と一人ひとりを回って訴えた(仕事でも彼はこうする)。今回は負けないで済むチャンスだ。グラウンドを使用できる残り時間はあと30分。神に頼んで同点にした。2回の勝者はもういなかった。最終回、敵は外野にボールを飛ばすことが出来なかった。私たちが繰り出す、疲れたボールを外野まで打ち返すには、元気な彼らのスイングスピードは速すぎた。スコアボードは17-17のまま固定。初めて負けなかった。

日が暮れて帰途に着く。小さな満足が私たちを包む。虫の声が耳に心地よい。秋風が汗ばんだTシャツを乾かす。ふくらはぎが暑い。アイスクリームを食べたところでふくらはぎは冷えない。今日から2日間筋肉痛の予定をいれた。月曜日には打ち合わせの予定が入っているが、ギリギリ間に合うだろう。

妻が帰ってくる前に、セピアに染まった着衣を洗濯槽に入れてボタンを押す。残りは浴槽に引きずり入れて、シャワーの蛇口をひねればよい。簡単なものだ。

妻と夕食のテーブルを囲み、試合の詳細を省くことなく、鼻腔を硬く広げて披露した。よく出来た妻はさすが慣れたものだ。夫が淋しがらないように、相槌を打っては返し、また打っては返す。まんまと私は上機嫌だ。話はついつい大きくなる。プロ野球選手の妻になったような気分だろう。

私は彼女が大好きだ。