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今のうちなら耳に残っている
御挨拶

今のうちなら耳に残っている(2009.10.19)

加藤和彦がなくなっちゃった。
同世代の、カッコよく生きていた男が突然に。

これで昔のことが思い出された。

僕が大学生のころ、神戸のラジオ関西に出入りしていた。
人気の電話リクエストで突然、ある曲がかかった。
テープを早回しで作った「帰って来た酔っ払い」。

電リク(電話リクエスト)の女性ディレクターが始めて取り上げたこのユニークな曲は、神戸の片隅で火を噴いた。
この曲こそ、フォーク・クルセダーズのデビューシングル。
作曲したのがメンバーの一人、加藤和彦だった。

ドーナツ盤レコード
その頃彼らは、ほぼ毎日ラジオ関西に来てレコードの宣伝をやっていた。
学生気分が抜け切れない京都の学生3人組であった。

DJのイソノテルヲのジャズ談義に不似合いだったにも係わらず、「帰ってきた酔っ払い」は昼夜を問わず、ガンガンかけられた。
今で言う「ドサ周り売り込み」であったのだろう。

芝生の中庭が美しかったラジオ神戸は、鉄筋立てのラジオ関西に姿を変え、おしゃれな雰囲気が薄れつつあったが、2階の窓から見える須磨海岸や松林がかろうじて洒落たローカルな匂いを放っていた。


当時、僕は中学校同窓会の世話役をやっており、講堂で余興をやってくれるバンドを探していた。
その候補としてフォークルに狙いを当て、ラジオ関西の女性ディレクターに当ってもらったが、急激に伸びた人気はとてもスケジュールが取れないという。
代わりに紹介されたのが尼崎のメンバーで構成される「赤い鳥」。

当日の公演は中学校講堂の放送設備が主だったので、音響効果は望むべくも無い粗末なものであった。
しかし、歌い出したとたん客席は水を打ったように静かに聴き入り、一曲一曲大きな拍手が寄せられた。
良いバンドを紹介してくれたとラジオ関西の若い女性ディレクターに感謝すると同時に、彼女の若いミュージシャンを見極める目に敬意を感じた。
「赤い鳥」はその後、「ハイファイセット」に姿を変えた。

改めて加藤和彦の冥福をお祈りする。

目利きおやぢ