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今のうちなら直ぐ買える
パンおやぢ(2008.10.8)

今日は、美味しい大人の食パンの店のご紹介。知ってて大いに得をするお話。

神田錦町。
言わずと知れた、りえぞん企画のある町である。丸紅にも歩いて5分以内という地の利のほかに、グルメには堪えられない美味しい食堂や食材の店もある。少し前から気になっていたのだが、新しいパン屋ができた。Patisserie Boulangerie KAIAN。冷やかしで飛び込んだ。

パンの街、神戸に生れ育った筆者は無類のパン好き。こっちに出てきてからも片っ端から食べ歩いたが、東京は日本で一番人口が集まっているにも係わらず、食パン屋のグレードは低い。朝も店が開くのが10時ごろ、とても朝食には間に合わない。味も焼き立ての美味さを声高らかに唄うばかりで、深みやトーストを口に入れた直後の味といったパンの醍醐味を強調しているところは見当たらない。
やはり、粉文化は関西なのだ。特に東京の食パンは、何処の店に行っても生地はモチモチモッチリで柔らかさと粘りを強調するものばかり。コシヒカリやないちゅうねん!関西に帰るたびにお気に入りのパン屋、岡本にある『フロイン堂』で数本を予約仕入れして、東京に持って帰っていた。

この『フロイン堂』という店は、E-Commerceも当たり前のこのご時世に、郵送は全くのお断りで、一日150本のペースを、かたくなに守り続け、その味とファンを守っている。この食パンを、出来上がったときに白いハトロン紙で包んで木製の棚にお客の名前を書き込んで並べる作法は何十年と変わっていない。湯気を上げたアツアツの出来立てパンはこうして温度と脂を適度に紙に吸わせ、トーストで美味しく食べられる頃まで熟成を待つ。あまり厚みはなく、1㎝程度に切った食パンをトースターにいれ、表裏を満遍なく焼く。うっすらと狐色に表面が出来たら準備完了。表面にバターを塗り、待ちきれずにガリッとかぶりつく。

                    パリッ!

その音に、5m先にいるワイフが思わず振り向く。
単なる表面が狐色に堅くなったのではなく、一枚の薄い膜が出来たようで、生地との歯切れのよさは他には類を見ない。このままで食べるのも捨てがたいが、筆者は其れをアメリカンクラブサンドにしてひそかに愉しむ。
ザワークラウトに少し火を入れるのがお好み。
今まで自分の中で最高だと思っていたが、日本経済新聞の全国美味いパンのベストワンに択ばれていた。
やはり“知る人ぞ知る”なんだなぁ。

さて、話は戻って、神田錦町3丁目のKAIAN。
ひとしきりパンの話をして筆者が筋金入りのパン好きとわかると「ぜひこれを食べてみてください」と食パン2斤を差し出された。なにやら懐かしい手触り。木目の程よい細かさ。「今夜トーストにして試してみるのでコメントは明日にまた」と言って店を後にした。

あくる日の昼前、上気した顔をして小走りにKAIAN に向かう筆者がいた。
ドアを開け、「いらっしゃいませ」の声が終わるのももどかしく、若いシェフに言葉を投げる。
「これは、香りの少し薄い、神戸岡本のフロイン堂の食パンじゃないか!」
受けた若いシェフの声が上ずって「判りますか!!」と見る見る顔が紅潮した。ようやく望んでいた食パンが東京でも手に入るという筆者の喜びと、この食パンが認められたというパン職人の安堵感と、お互い近くにいたと言う興奮でパン談義はその後長く続いた。

絶対お薦めの食パン。フロイン堂の薪釜とは少しだけ違うが、KAIAN は石焼底の釜を使うことで、その大事なエッセンスを守っている。そのうち伝説のフロイン堂の食パンが東京でも食べられると評判が立ち、予約殺到すること受け合い。早速、今から常連のお客になっておくべし。



【KAIAN のシェフ、古山氏(25歳)にお話を伺いました】 ※写真で食パンを焼いているのが古山さんです。

叔父が地元(大阪)で『メルク』というパン屋をしているのですが、その昔『フロイン堂』で修業していたんです。僕は、小さい頃、叔父の店に行くと「パン屋さんになりたい」と言っていたそうです。それで、子供の時に食べていたようなうまいパンを作りたい、うまいパンを東京でも作ってみたいと思い、この道に入りました。
うちの店の食パンは、“東京では他にない味”という自信があります。あと、カンパーニュも得意です。カンパーニュは焼き立てよりも1~2日寝かせた方がおいしいんですよ。

将来は、食事に合わせたパンが置いてある店を目指しています。つまり、お客さんが「今日はシチューだからこのパン」「サンドイッチを作るからこのパン」というようにパンを選べる店です。それに、そんなふうにパンにこだわるお客さんが増えると嬉しいです。

今はまだ『フロイン堂』や『メルク』のレシピを受け継いでいますが、オリジナルのレシピができるようになるまで、まだまだ勉強することがたくさんあります。


おいしいパンを作るために、朝は3時半から(!)厨房に立つという古山氏。忙しくて食事をとる以外はほぼ立ちっぱなしのようで、店内にも厨房にも椅子が無く、立ったままのインタビューだったのが印象的だった。
実は古山氏は、大阪芸大短期大学のスペースデザイン学科を卒業した後に、パンの道に進まれたとのこと。 “ものを作る”という点では共通していても、「パンは“毎日同じものを同じ味で提供できなければいけない”ところが難しい」という言葉が胸に残った。

KAIAN の皆さま、お忙しいところ、取材させていただいて本当にありがとうございました。

パンおやぢ

Patisserie Boulangerie KAIAN
住所: 東京都千代田区神田錦町3-14-12
TEL : 03-6231-5430